第26章 交差する想い
ポケットにスマホを押し込み、病院へと足を進める。
いや、待て。
そもそも紡はまだ病院にいるのか?
行ってみて退院してたら、それこそアホだろ。
もう1度スマホを取り出し、紡にLINEしてみる。
お、返信早い。
“ まだ病院 ”
ひと言かよ!
入院中ってことか?って打ち込み、送信する。
“ そう。1週間くらいダメですよって言われたよ ”
そんなに?!
捻挫でそんなに入院とか、初めて聞いたぞ?
“ 渡したい物があるから、部屋番号教えろよ ”
また、送信する。
・・・イキナリ返信来ねぇのかよ!
電話してみるも、話し中・・・
まぁ、いっか。
入院中ってのは分かったし、とりあえず向かっとけば返信そのうち来るだろ。
とりあえず・・・さすがに手ぶらじゃ行きにくいしな。
紡はそんなの気にしないって言うだろうけど、足のケガで入院って事は自由に歩き回れないって事だろ?
じゃ、アイツの喜びそうな甘いモンでも持ってってやるか。
駅前にケーキ屋、あったよな?
病院とは若干反対方向だけど、アイツが喜ぶ顔・・・俺が見たいし。
来た道を軽く折り返して、駅前へと向かう。
紡、イチゴ好きだったよな?
・・・だったら、イチゴの方がいいのか?
紡が好きなもの。
イチゴ、ミルクティー、甘い物、パンダ、クマ・・・後なんだっけ?
・・・とりあえず、ケーキ屋にしとくか。
思いつく物をチョイスしながら、店までの道を歩く。
途中、同じ学校のヤツらとすれ違うも、軽くアイサツを交わしサッサと歩く。
店に入ると、種類豊富過ぎて迷う・・・けど。
イチゴ好きなら、たくさんイチゴがある方が喜ぶだろ?
そう決めて、イチゴタルトとイチゴを豪快に使ったショートケーキとか言うのを買って店を出た。
スゲーじろじろ見られたけど、俺どっか変だった?
寝癖付いてるとか?
さり気なくショーウィンドウに映る自分をチェックして、寝癖なんて付いてないことを確認する。
男が1人でケーキ買うのが珍しいとか?
別にいいだろ、俺が食べるんじゃないんだから。
心の中で悪態をつきながら歩いていると、少し離れた所から見知った姿が歩いてくるのが見えた。
ヤベ、あれ岩泉さんじゃね?
何となく、これから紡の所へ行く事に後ろめたさを感じて下を向きながら知らん振りで歩いた。