第16章 初めの1歩
『・・・澤村先輩はバレーが好きだと、答えをくれました。だから、私にはこの申し出は受けることは出来ません』
たとえ嫌われてもしまっても、それは仕方ない。
中途半端な私が、真っ直ぐ前を見ている彼らの輪に入り、足を引っ張る事は出来ないから。
澤「それってどういう・・・」
『澤村先輩も菅原先輩も、いま高校3年生で、これから限られた時間を同じ境遇で、同じ価値観で、同じ未来を目指す仲間と過ごすのは、とても大切だと思うから。だから、』
澤「城戸さんは、俺達の大切な仲間には、入れない?」
澤村先輩の言葉に、胸の奥が疼いた。
少しずつ湧き上がる気持ちに、私は戒めとして自らそこに杭を打つ。
『私は・・・澤村先輩みたいに、真っ直ぐな気持ちではないんです・・・』
静まる部屋の空気が、肌を掠めていく。
何も飾らずに、ホントに真っ直ぐに注いでくれる言葉に、心が震える。
でも・・・
『今の私は中途半端で、バレーに対する思いも宙に浮いてて・・・そんないい加減な気持ちの私が未来を真っ直ぐ見ている光の中に、入る事は許されないんです・・・』
澤「それは・・・バレーが嫌いになった・・・って、事?」
途切れ途切れに、澤村先輩が呟いた。
『ちが・・・』
違う・・・
そう言おうとして、澤村先輩達を見る。
でも、言えなかった。
肩越しに見える写真立てが、阻む・・・
私はそこから目を背けるかのように俯いた。
『私は・・・バレーを、捨てたも同然なんです・・・』
みんなが息を飲む音が、聞こえてきた気がする。
どれだけの沈黙が続いたのか、それも分からない。
ただ分かることは、自分で胸の奥に打ち込んだ杭が、それを解放しろと言わんばかりにグラついている事だけ。
澤「捨てたも同然・・・って?」
沈黙を破った澤村先輩のひと言は、静まり返ってしまった部屋に大きく響く。
『それは、』
なんて、話せばいいんだろう・・・
口を開きかけても、それを何かに塞がれるように続く言葉が見つらかない。
影「城戸・・・」
不意に名前を呼ばれ、体がピクンと痺れる。
影山の方に顔を向けると、揺らぐ瞳で私を捕らえている。
“ ムリして言わなくてもいいだろ ”
言葉に出さず、影山は瞳だけで語りかけて来る。
でも・・・
“ これ以上、傷つくな ”