第16章 初めの1歩
「何それ。俺達は3人とも同じ脳みそだよ。あ、慧太はちょっと熟成期間が長いのかな?」
救急箱を片付けながらサラリと言うお兄さんの言葉に思わず吹き出してしまった。
慧「あっ?!いま笑ったな?!笑っただろ?!」
「す、すみません、ついっ」
チラッと見ると大地も影山も肩を震わせて耐えている。
ズルイな2人とも、オレ生贄かよ。
そう思って2人の横っ腹にツッコミを入れる。
それを見てお兄さんたちも一緒に笑いだし、その場はそれで落ち着いた。
澤「あの、お兄さん?」
大地が声をかけると、2人のお兄さんが同時に返事をする。
澤「え?あ、あれ?」
桜「あはは、そうだよね?同じ様なのが2人でいるから、そうなっちゃうよね。俺達の事は名前呼びでいいよ、な、慧太?」
慧「おぅ、影山もそうだしな?」
影「っす」
澤「じゃあ、えっと、桜太さん。城戸さんの怪我って・・・?」
「あっ、オレもそれ気になります!」
大地の言葉に続けて思わず立ち上がり身を乗り出すように言うと、大地に座れと引っ張られる。
桜「紡?一応いろいろと見たけど、大丈夫みたい。膝も肩も、所見では可動域には問題なかったし、動かすと痛いとか、そういうのも特にはなかったよ。一応、湿布は貼っといたけどね」
それを聞いて大地もオレもほっとする。
「よかった。やっぱり本物のドクターにそう言われると安心です」
桜「本物のドクターって、菅原君達が応急処置するのと変わらないよ?みんなも練習中とかに誰かが怪我したら、やるでしょ?冷やしたりとか。それと同じだよ?」
澤「確かに俺達も、そう言った意味では応急処置はしますけど、ちゃんとした医者の見解がつくのとつかないのとでは安心感が違います」
大地の話にオレもウンウンと頷ける。
慧「それにしても、随分とのんびりな応急処置だったな、桜太センセー?」
桜「慧太まで。応急処置自体はそんなに時間かかってないんだけど、終わってから紡と話をしてたから」
慧「いつもの長ーい説教か?」
桜「違うって。まぁ、怪我に関しては注意だけしたけどね。・・・そう言えばさ、紡の足を見るのにベッド腰掛けさせてから正面に俺も座ったらさ、紡が急に凄い勢いで謝ってきたんだよね」
慧「は?応急処置してもらう事に対してか?」
慧太さんの言葉にオレも興味が引かれ耳を傾けた。