第39章 聳え立つ壁
~ 菅原side ~
いよいよ伊達工との試合が始まった。
オレ達は前回の伊達工戦で負けて、そこから色々あって・・・旭と西谷の歯車が噛み合わなくなって。
だけど、今は違う。
影山と日向しか出来ない速攻っていう武器も増えた。
月島の高さも、今までの烏野にはない守備力だ。
それに、旭も、西谷も戻って来た。
西谷が戻ってからも旭はしばらく部には帰って来なかったけど、影山や日向が何度も旭の所に来て何かを話しているのは見かけた。
それに、紡ちゃんも・・・
あの時、旭の所に来ていた紡ちゃんが倒れたって聞いて大地と駆けつけた時、そこに影山と日向の姿がなかったことにオレは驚いた。
てっきり、そのふたりも一緒にいるもんだと思ってたから。
それに、紡ちゃんを保健室に運んだ放課後。
大地と様子を見に行けば、紡ちゃんと旭がふたりでいて。
そこで2人がどんな事を話していたのか分からないけど、去り際の旭は今まで部に戻ろうとしなかった旭とは、どことなく表情が変わっていたようにも見えた。
そして、あの紡ちゃん曰く放課後デートだと言っていたあの日も。
旭は紡ちゃんと話している時、それまでとは違う明るい顔をした。
その時の事は詳しく紡ちゃんも教えてくれなかったけど、東峰先輩は大丈夫ですと言って・・・笑った。
それから少しして、旭は部に顔を出した。
出した・・・というより、あの時は日向が旭を見つけて大声で呼んだんだけど、体育館の入口に姿を見せた旭は、いつもの制服姿なんかじゃなくて、ジャージ姿で。
中に入ることを躊躇っているかのような旭を、静かに見守る紡ちゃんと。
その視線に気付いた旭の、安心したような顔が今でも忘れられない。
数日間の中で、紡ちゃんと旭にどんな共鳴があったのか分からない。
だけど、紡ちゃんが大丈夫だって言った通りに旭は戻って来た。
それになんか、妙に仲良しっぽいし。
今だって、髪を直しに戻った旭と紡ちゃんが同じ髪型になっちゃってたりしてさ?
さっきまでは紡ちゃん、2つ結びにしてたはずなのに。
なんで旭と同じように髪を纏めちゃったりしてるワケ?!
ちょっとモヤッとしながら観覧席にいる紡ちゃんを見上げれば、それに気付いた紡ちゃんが小さく手を振ってくれる。
うん・・・安定の可愛さ。
じゃなくて!!