第39章 聳え立つ壁
会場内に戻ってからすぐに、私は身支度を終えたみんなを見送って自分の仕事・・・というか、みんなの荷物を最小限の広さに片付ける為に残ってカバンをきちんと並べていた。
いくら場所取りしてるからって、そこに脱ぎ散らかしたり荷物広げ過ぎてるってのは良くないし。
『これでよし!と』
整理整頓が終わり、みんなのところに行かなきゃと振り返って、目の前に現れる大きな体に顔を上げる。
『東峰先輩?!あ、もしかして忘れ物ですか?って、あれ?なんかいつもと違、う・・・?』
目の前に現れた大きな体の正体は東峰先輩で、だけど見上げた私に見えるのは、なんかちょっと雰囲気が違う・・・
『あっ!髪の毛どうしたんですか?!』
旭「それが・・・歩いてたら突然コレが切れちゃってさ・・・予備のヘアゴム持って来てたっけ?って見に来たんだよ」
東峰先輩が苦笑しながら見せてくれた物は、プツンと切れてしまったヘアゴムを無理やり輪っかに結び直そうとしたと思われる小さめな輪っかのヘアゴムで。
旭「結べば使えるかと思ったんだけど、上手く出来なくて結局使えなくて・・・大地には呆れられるし、西谷にはしっかりしろって言われるし」
大きな体で小さくモゴモゴと呟く東峰先輩に、思わず笑ってしまう。
『まぁ、それくらいでそんなに心折れなくてもいいじゃないですか。だから大地さんにヒゲちょこって言われるんですよ?とにかく、予備のヘアゴムがあるか確認して下さい』
はい!と東峰先輩のカバンを渡すと、中をゴソゴソとするも東峰先輩は大きくため息を吐いた。
旭「ダメだ・・・なかった。このまま試合に出るしかないか・・・」
鞄に頭でも突っ込むつもりか?!と思うほど背中を丸めて頭をガシガシとする東峰先輩を見ながら、私も何気なく自分の頭を触って、気付く。
『そうだ!今日はそうだったんだ!東峰先輩、不幸中の幸いって、こういう事でもあるんですよ!』
ほら見て!と自分の首の両脇にある髪を摘んで振って見せて、そのうちの片方のヘアゴムをスルリと外す。
『今日は暑そうだっだから、何となくふたつに分けて緩く結んでたんです。だから東峰先輩、コレ使って下さい』
旭「え、でもそれじゃ城戸さんが」
『私なら大丈夫です。もう片方のを使って髪を纏めちゃいますから。それに時間もないし、他に方法がないし、って事で。はい、どうぞ?』
