第33章 それぞれの覚悟
さっきの桜太にぃの話。
次の試合からは私を時々入れながら相手チームの様子を見るとか言ってたけど···
慧「なにシケた顔してんだ?」
『そんな顔はしてない』
慧「してんだろ?ブッサイクな顔で」
『···お互い様でしょ』
慧太にぃ、家に帰ってから···お返ししよう。
夕飯の後のコーヒーに、桜太にぃのだけハートのお砂糖つけよう。
慧太にぃのは、スティックシュガーだけにしてやる。
っていうか、寧ろお湯の中にコーヒーの豆だけ浮かべとこう。
うん、そうしよう。
妙な決意を固めて、キュッとシューズの紐を結ぶ。
ちょっと待って。
勝ったら慧太にぃのヒゲがなくなるんだから、そしたら寝ている間にマジックで書いとくってのも···アリ?
···起きたらビックリするだろうなぁ。
よし、その報復も副賞にしとこう。
慧「お前、なんか企んでんだろ。バレバレだぞ」
『べ、別に···プッ···』
ヤバい···慧太にぃの顔みたら、笑いが···
慧「あ~なるほど?オレの顔見て笑うとは、お前ヒゲの事でツボってんな?言っとくけどな、紡。オレがヒゲなくなったら桜太と見分けがつかなくなるからな。一卵性の双子だしよ」
ないない、それは絶対ない。
桜「ないよ。絶対、紡は俺と慧太を間違えたりしない」
キュッと音がして、私達の側に桜太にぃが立った。
慧「なんでそう言いきれるんだよ」
桜「紡は、俺と慧太を間違えた事は今まで1度もないからだ。例え東峰君とお前を間違えても、俺とお前を間違えた事はない」
···桜太にぃ、それなるべく早めに忘れてよ。
桜「体格も少し違う。一卵性のって言っても、同じなのは顔だけ。あ、まだあった···素行も違う」
フッと笑いながら言う桜太にぃに、慧太にぃはあのなぁ···とため息を漏らした。
慧「表立って目立ってないだけで、お前の素行もそこそこだっての。なかなかいないぜ?幼児のフリフリパンツ買いに行く高校生とかよ」
フリフリパンツ?!って、この場合どう考えても私のだよね?!
桜「あれは俺1人で行ったんじゃないって。同行者がいただろ?そしてそれを選んだのは俺じゃない」
同行者って···あぁ、そっか···
桜「ま、そんな話はこっちに置いといて、だ。紡、お前に特別指示を出す」
『私に?』
桜「そう、紡にしか出来ないからね」