第32章 不協和音
道「···っていう事で、今日から練習試合まで男バレでマネやってる、1年の城戸さんが助っ人として仲間入りしてくれるから、みんなよろしくね!」
『城戸 紡です。よろしくお願いします』
それだけ言えば、普段男バレの体育館に出入りしてるから、別段これと言って細かい自己紹介なんて必要なかった。
その場にいるメンバーと挨拶を交わし、道宮先輩が練習参加は放課後からで···今はとりあえず、男バレの朝練の方へ顔だして自分のやるべき事をしておいでなんて背中を押す。
けど、そう言われてしまったら従うしかない訳で、私は言われるままにその場後にした。
やるべき事、と言われても。
今頃はみんなに澤村先輩から簡単に説明されて、清水先輩がマネの仕事を···とか思うと、なかなか足も進まない。
さっきの澤村先輩の感じ、きっとまだ怒ってるよね。
一歩ずつ前に進む度に、ため息ばかりが溢れ出す。
怒られて、嫌な奴だと思われても仕方ない···かな?
直属の先輩に当たる人に、これと言ってたいした相談もなく、寧ろケンカ別れのような感じのまま結論を出して行動してるのは私だし。
···相談?
そうだ!矢巾さんにLINEだけでも先に送っておこう。
向こうも今は朝練とかしてるだろうから、お昼休みにまた連絡することだけを伝えておけばいいかな?
歩きながらスマホを出して、ポチポチと操作をしながら必要な内容だけを送信した。
···のもあっという間で。
目の前には男バレが使う体育館の入り口。
行くしかない、か。
大きく深呼吸して、普段と変わらないように見せる為に元気よく挨拶をして中に入る。
始まっている練習を横目に小走りで清水先輩の所へ向かって諸事情を自分の口から説明すると、清水先輩はフワリと笑って···大丈夫だからとドリンクを作り出した。
清「さっき、澤村がみんなに説明してたから。道宮さんの所に助っ人に行くんでしょ?」
『はい···まぁ』
清「それでね、城戸さんが全部の用事を終わらせて戻ってきた時に、愛想尽かされないように自分達もしっかり練習するからな!とか変な方向に気合い入ってた」
愛想尽かされないように?
私が?
清水先輩の言葉に首を傾げていると、清水先輩はクスクスと笑い出した。
清「なんだかんだ言っても、澤村だって寂しいのよ。みんな城戸さんの事、大好きだから」
