第32章 不協和音
校内に響く和泉先生の呼び出しに足が止まる。
それと同時に、道宮先輩にも居場所がバレてしまった。
道「せっかく見つけたのに、先生からの呼び出しじゃ仕方ないか···ね、城戸さん?放課後は部活行くんでしょ?そしたらその時にちょっとだけ話聞いて欲しいんだけど」
『すみません道宮先輩。そのお話は朝もお断りしたので···失礼します。あ、山口君と月島君もありがとう、じゃ私急ぐから』
道宮先輩には軽くお辞儀をして、あとの2人には手を振って···私は職員室へと向かった。
···怒ってるだろうなぁ、和泉先生。
あの青城との練習試合の日、話を聞いてて面倒になって、振り切って逃げたから。
翌日以降は私もケガとかで病院にいたから、とっくに諦められてるとばかり思ってたのに。
職員室のドアの前に立ち、これから何を言われるんだろうかとため息を吐いた。
武「あ!城戸さん!···良かった、間に合ったようですね」
『武田先生、間に合ったって···私、ですか?』
ドアにかけた手を離して言えば、武田先生はもちろんそうですよ?と笑った。
武「ちょうど清水さんのクラスで授業があって、終わってから立ち話をしてたら和泉先生の放送が聞こえて···多分、あの話の事ではないかと気になったんで急いで来てみたんです」
はぁ~···と深呼吸するあたり、余程の勢いで走って来たのが分かる。
『でも、武田先生は担任の先生とかじゃないのに、どうしてですか?』
先生なのに廊下を走るなんてと笑いながら言えば、武田先生は少しズレた眼鏡を直しながら、また笑った。
武「約束したじゃありませんか。次に和泉先生の呼び出しがあった時は、僕も立会いますって。だから、その約束を果たす時が来たな、と思って」
約束···?
『あっ···』
武「思い出して貰えたようですね?」
お日様のように暖かく笑う武田先生を見て、さっきまでの妙な緊張感が解けていく。
病院で車椅子を押して外へ連れ出して貰った時、武田先生は確かに次は一緒に···って言ってくれた。
その時の言葉を、ちゃんと覚えていてくれたんだ···
武「僕はあなたに、直接的な教鞭を取ったことはないので教え子と呼ぶには何か違うかも知れませんが···部の顧問という立場からすれば立派な教え子にあたるかと。なので、和泉先生に何か言われても今日は退きませんよ」
