第31章 ステップアップへのチャンス
「「 っしゃぁぁぁ!! 」」
音駒側のコートの盛り上がりと。
誰も何も言葉を出さない、烏野側のコート。
その温度差に胸が痛くなる。
繋心を見れば、なにか考え込んでるのが分かるし。
とりあえずは、黒星ひとつ···だね。
日「もう1回!!···もう1回、やろう!!!」
日向君が大きく声を上げ、それを見て音駒の監督が笑った。
猫「あぁ、最初からそのつもりだ。もう1回、それが出来るのが練習試合だからな」
そのひと言に私も笑ってしまう。
確かにそうだ。
もう1回、もう1度···それは練習試合じゃないと出来ないから。
日「じゃあ!今すぐやろう!!」
繋「あ~待て待て日向、とりあえず1回休憩挟むぞ。神経すり減らしてんのはプレーヤーだけじゃねぇからな」
菅「そういうこと。おーい紡ちゃん!こっち戻って来なよ!」
ニコニコと手招きをする菅原先輩に呼ばれ、主審をしてくれている音駒のコーチに軽く頭を下げて烏野のベンチへと向かう。
菅「はい、紡ちゃんにはコレ!特製のミルクティ!」
ほらほら!と差し出されたのは、私が普段から使っているマグボトルで···
『これ···合宿中は使わないから家に置いてきたのに、どうして···?』
菅「って、思うでしょ?でもあそこ見てみな?」
菅原先輩が指をさす方に顔を向けてみると···
『慧太にぃ?!な、なんで?!今日仕事って言ってたのに!!』
観覧席の柵に寄りかかりながら、ヒラヒラと私に向けて手を振る慧太にぃがいた。
慧「ん~、サプライズで見に来てやろうと思ってよ」
『そういうサプライズいらないんだけど』
慧「まぁそういうなって、な?桜太」
『桜太にぃまで?!それこそ病院は?!』
今日は仕事だから絶対来れないって桜太にぃだって昨日LINEで···
『もしかして騙した···?』
慧「人聞き悪い言い方すんなよ。サプライズだ、サプライズ」
桜「俺はちゃんと仕事して来たよ。と言っても当直明けだから、慧太よりは少し出遅れたけどね?」
当直明けだったら···寝てて欲しいんたけど。
慧太にぃはいつでもどこでも寝れるけど、桜太にぃの場合は···そうじゃないから。
繋「げっ!···出たなブラックツインズ···」
騒ぎに気づいた繋心が、もの凄く警戒オーラを発しながら近寄って来た。
桜「烏養。下降りてもいい?」
