第31章 ステップアップへのチャンス
~ 烏養繋心side ~
さっきから事あるごとにチラチラと紡がオレを見てる。
ま、アイツの言いたい事なんて想像つくな。
それに、菓子で釣って紡を副審にさせたのにも理由がない訳じゃねぇ。
この合宿中に澤村達から見せられた、紡が今まで記録したノート。
清水は清水で、今後の手本になるような部誌の付け方をしていたが···紡のはまた違う角度から見た記録だった。
アイツ独自の切り口からの視点、考察、コメント。
書き方を見りゃ、誰が教えたのかなんてすぐ分かる。
昔、あんな風にこと細く丁寧に書いてたのは···桜太だ。
だからこそ、紡はあの書き方で記録を取ってるんだろう。
身近に手本となるヤツがいるからな。
···それを踏まえての、副審だ。
ベンチで試合を見ながら書くもよし。
だがここには清水がいる。
だったら紡には、オレらより近い場所でアイツらを分析させた方が得だ。
あ、またコッチ見やがった。
だァもう、うっせぇな紡!···分かってるっつーの!
こっちだってやられっ放しで終わらせねぇよ!
田「っしゃァァァ!同点もぎ取ったらァ!!」
しかし···田中は、良くも悪くも全力だな。
山「通さねぇぞオラァ~!!」
向こうにも田中と似たようなタイプがいるから、そのせいか?
いや、違うな。
田中は普段からあんな感じだ。
だからこそ···よし···かかった!!
影山がトスを上げ、澤村がスパイクを決めた。
ー ピッ! ー
オトリは日向だけじゃねぇからな。
そんでもって今のでローテーションが動いて···
猫「烏野はまたあの3番が前衛に上がって来たか···」
そうだ、このローテーションをオレは待ってた。
ブロックの要であるミドルブロッカーを100%引き付け、なおかつそれを交わして得点できる日向と、現在···烏野で単体での攻撃力がトップの東峰。
そして今、澤村がスパイクを決めたから音駒からのサーブだ。
ー ピッ! ー
日向と東峰。
その両方が前衛にいる今が···烏野が逆転する最大のチャンス!!
清「ここで1点取ればデュースですね」
武「えぇ···デュースに持ち込めば逆転のチャンスが来る。この1本が、正念場ですねぇ···」
そうだ···このゲームは、今この時が正念場なんだ。
さぁ···思いっきりかましてやれ!お前ら!!
