第29章 ネコと呼ばれる人達
ー ピッ!ー
田「ッシャァァ!!」
田中先輩のスパイクが決まる。
これで、22対22。
得点板を見ながら、流れる汗を肩口で拭う。
相変わらず影山は納得行かない顔のままだし、繋心はこのミニゲームから何を拾い出そうとしてるんだろう。
チラリ、と菅原先輩を見れば。
影山とは対照的に、スッキリとした顔でベンチでみんなに声をかけている。
とにかく、あと3点取ればゲームが終わる。
こっち側の失点は、殆どがセッターとスパイクを打つメンバーの呼吸が合わなくて···が原因だけど。
それでも、あと1点ずつを強気で攻めないと。
こっちのチームは私がいるだけで、きっと少なからずハンデを負っている。
それを口に出せば、みんなはそんな事ないって言ってくれるけど。
それでも、戦力と呼ぶには···程遠い。
繋「ちょっとタイムな!」
ここでタイム?!
しかも繋心は監督でもコーチでもなく、審判なのに?
繋「メンバーチェンジする。菅原、影山、お前らコーチに入れ」
菅「え?」
影「···ッス」
全員で?ってこと?
繋「そんでもって、桜太と慧太は···」
桜「烏養に言われなくても分かってるって」
慧「そうそう。しっかし、いつ交代するのかと思ってたら、随分とギリギリまで働かせやがって」
···どういうこと?
桜太にぃと慧太にぃは、途中で交代するって事が最初から分かってたの?
繋「うっせーな!いろいろ考えてたんだから仕方ねぇだろ!」
桜「色々?」
慧「どうせアレだろ?どこそこの店のオネエチャンがいい体してたなぁ、とかじゃねぇの?」
オネエチャン?!
いい体?!
桜「慧太···思ってても繋心が言うわけないだろう」
繋「思ってねーよ!!···ったく、あと紡。お前も出ていいぞ」
『私も?』
やっぱり、役不足···とかなのかな。
影山がコートに入るんだから、それも当たり前と言えば、そうなんだけど。
桜「紡、違うよ」
ポンッと背中を叩かれ、桜太にぃを見上げる。
桜「紡が力不足だとか、そういうのじゃないから。繋心はね···まぁ、この後のゲームを見てればわかるよ」
『桜太にぃは何が起きるか分かるの?』
涼しい顔をしながらも流れる汗をタオルで押さえる桜太にぃに問い返すと、ただいつもの様に笑ってるばかりで。
私はひとり、難しい顔をしていた。