第29章 ネコと呼ばれる人達

桜｢···させるか慧太！｣

慧太さんが何をしようとしたのか分かったのか、桜太さんがブロックに飛んだ！

慧｢あらま、残念｣

桜｢ワンチ！！｣

鈍い音を立ててボールが弾かれる。

澤｢オーライ！！｣

澤村さんが駆け出し、レシーブした。

···えっ？！

田｢なぬっ？！｣

旭｢どっちが···｣

レシーブされて高く上がったボールに、桜太さんと城戸さんが走り込む。

トスは···どっちが？！

コーチの話だと、桜太さんがセッターだよね？！

でも、城戸さんだっていつもはトス上げてくれてる！

じゃあ···いったいどっちが？！

戸惑いを見せるオレ達を見て、城戸さんがちょっとだけ···笑った？！

これってもしかして···

まさか···桜太さんがそのままダイレクト？！

｢日向！絶対拾うよ！！｣

日｢お、おうっ！！｣

レシーブが上手くないオレ達じゃ、アテにならないかもだけど！

田｢そっちは任せたぞ山口！日向！！｣

ネットの向こうで、桜太さんがキュッとシューズを鳴らして高く飛ぶ。

来る！！

何か分かんないけど、オレのとこに来る！

···気がするっ！

田中さんと成田さんがブロックに飛ぶけど間に合ってない！！

長身の桜太さんが腕を振り抜くのと同時に鈍い音が響いた。

ボールは···まっすぐオレの所に飛んで来て、グッと唇に力を入れる。

｢ｸｯ···！｣

痺れる様な痛みが来てボールを弾いた。

重ッ···！！

田｢ナイスレシーブ山口！！｣

慧｢うわぁ、桜太ってば大人ゲねぇ···｣

桜｢慧太が言うな｣

ボールの勢いに押されて床にへばり込みながら、その行方をしっかりと追う。

よかった···今度はちゃんとレシーブ出来た！

慧｢ナイス頑張り！さてと、誰に上げよっかねぇ～？｣

慧太さんがトスを上げる構えに入って、バタバタと足音をさせながら、こっちのスパイカー陣が走り込む。

田｢おっラァ！！···お嬢！勝負だ！！｣

『私？！』

西｢紡！｣

う、ウソ？！

田中さんが城戸さん狙いで？！

慧｢うっし！じゃあ坊主君！｣

···と見せかけて、と、慧太さんが小さく呟きながらニヤリと笑う。

慧｢ほらよっ！！｣

慧太さんがトスを上げたのは···