第29章 ネコと呼ばれる人達
ピピピピ ピピピピ ピピピピ···
すぐ近くで、アラームが鳴り響く。
まだ、眠いよ···でも、大丈夫。
スヌーズ機能かけてあるから、また後で鳴るし。
だから、聞こえないフリをして、布団の中に潜り込む。
ピピピピ ピピピピ ピピッ···
ほら、止まった···あと、5分だけ···
ー 紡、起きなきゃダメだろ? ー
···止まったんじゃなくて、止められたのか。
『ん~···お願い桜太にぃ、あと5分だけ···』
そう言って、更に奥まで潜り込む。
慧「桜太じゃなくて残念だったな、紡」
手荒く布団を剥ぎ取られ、温もりが一気に消えてしまう。
『慧太にぃ?!···え?でも今?!』
さっき聞こえたはずの声の主はどこにも見当たらず、目の前にいるのは意地悪な顔で笑う慧太にぃ···
慧「オレと桜太が双子だっつー事、忘れた?」
や、やられた···また騙された。
普段は別に間違ったりはしないけど、極々たまに慧太にぃは私をからかう為に桜太にぃの真似をして起こしに来る。
『あぁもう!朝からなんか悔しい!』
ボフッと枕を慧太にぃに押し付け、パシパシと叩く。
慧「毎回騙されるお前が悪いんだろうが!ホレ、早くしないと起きがけのマヌケな姿を菅原に見られんぞ?イイのか?」
なんで菅原先輩が出て来る···
『あぁっ!!···そ、それだけは絶対ヤダ!!』
ベッドから跳ね降りてパーカーを羽織り、手櫛で髪を整える。
慧「お前、ちゃんと髪乾かさないで寝たろ···」
あちこちについた寝癖を指で掬って慧太にぃが笑う。
『だって···眠かったんだもん···』
慧「しょうがねぇアホだのぅ。ま、そんくらいなら?このカリスマ美容師のオレ様がちゃちゃっと直してやるから。行くぞ、紡」
慧太にぃはわしゃわしゃと髪をかき混ぜながら笑い、早くしろ、と更に笑った。
洗面所で慧太にぃに寝癖を直してもらい、ついでだからとヘアアイロンで髪も巻いて貰う。
元々パーマかけてくれたのは慧太にぃだから、それほど時間なんてかかる事もなく、私が自分でやるよりキレイに支度が出来た。
慧「さすがオレ様~!ん?ありがとうが聞こえませんな?ん?」
···これさえなかったら、無条件にありがたく思えるんだけどね。
『アリガトウゴザイマシタ···タスカリマシタ』
慧「棒読みかよ」