第33章 episode0
2人で歩くのも最後だと思うと、それは辛くて足の動きが鈍い。
ちゃんと笑って、お別れしなきゃならないのに雑談的に話し掛けられても頭に入ってこない。
少しでも長く一緒にいたくて、初詣はいつも親戚の家の近くの神社、なんて理由を付けて遠くまで歩いた。
色々と足掻いても時間は進むし、歩いていれば目的地に着いてしまう。
お参りした時にした願い事は、クロに出ていって欲しくない。
私は、上手く笑えているか分からない。
「センパイ、話あんだけど。」
帰り道。
そこまで、殆ど右から左に流れていた言葉の中で、それだけ拾えた。
「…彼女が出来たって話?」
クロの口から言われたくなくて、自分から切り出す。
「やっぱ、気付いてたか?」
肯定を表す台詞が苦しい。
でも、笑わないと。
「なーに、私に気ィ遣ってんのよ。そういうの、早く言って欲しかったなー。」
わざとらしくても、明るく。
クロが、次の言葉を…。
出ていきたい、って言葉を、言いやすいように。
そうした筈なのに、クロは黙ってしまった。
じっ、と私を見る目は本心を探っている。
「…それで、さ。」
長い沈黙の後、やっと開かれた口。
「彼女が、センパイに会ってみてぇって事なんだが…嫌か?」
そこから紡ぎ出された台詞の意味が理解出来なかった。