第11章 珈琲色
息を飲むほどに美しい
本当にこんな人、この世に居るなんて信じられなかった。
「あ…あの…」
「襖、早く閉めて」
「あっ…うん…」
そっと唐紙の襖を閉めると、部屋の中はしんとした。
「相葉さん…?もう準備できてるよ?入ったら?」
ここは、遊郭。
現代にそんなところあるのかって…?
あるんだ。
未だにひっそりと隠れるように…
赤い襦袢だけを身に纏って、その人は歩いて行く。
さっきまで、お茶屋の座敷で飲んでいたから現実からの浮遊感が凄い。
「…夢なのかな…」
「え?なに?」
「なんでもない…」
部屋の中は艶めかしい。
よくある和室の作りで、壁は薄いグリーンの砂壁。
八畳ほどの広さの部屋には、箪笥があるだけで調度品は少ない。
部屋の中央には二つの高い枕が置いてある赤い布団。
映画やドラマで見たことある…
遊郭の中の、遊女の部屋。
その行為のための、部屋。
「座ったら…?突っ立ってないで…」
その人は、部屋の奥の窓障子を開けると窓を開けた。
窓枠に腰掛けると、タバコを燻らせた。
「一服させてよね…ちょっと酔っぱらっちゃった…」
「うん…」
仕方なく布団の上に座り込んだ。
どうしていいんだかわからない。
俺は今から、この人を抱くのか…
そう、だよな…?
だってここはそういう場所なんだもん…
「相葉さんも吸う?」
目を上げると、その人は俺を優しい目で見ていた。