第7章 グレイ scene5
そっと翔ちゃんの背中に腕を回して抱き寄せた。
お互い抱きしめあうと、もっと温かい。
いつの間にか、恋人同士みたいに俺達は抱き合っていた。
「あったかい…翔ちゃん…」
「うん…あったかいね。智くん…」
わずかばかりのオレンジの光の中
なぜだか、心臓がさっきから高鳴って
うるさい
「智くん…?」
「ん…?」
「どうする…?このまま死んじゃったら…」
「…そりゃ…困るなあ…」
「ね…思い残すこと、いっぱいだよなあ…」
「そうだね」
「智くんもあるんだ?思い残すこと」
「あるよ…」
「ふうん…」
翔ちゃんのくりっとした目が俺を見つめた。
「…どんなこと…?」
ちょっとだけ考えた。
でも目の前に、翔ちゃんの唇がある。
俺の身体に絡みつく、白い身体がある。
「…こんなこと…」
そのさくらんぼみたいな唇にキスをした。
逃げそうになる体を、無理やり引き寄せて強く抱きしめた。
「なに…するの…」
唇を付けたまま翔ちゃんが呟く。
「ん…?キス…」
「それはわかってる」
「好きだ」
「え…?」
「死んじゃったらいけないから、言っとく」
もう一度唇を押し付けると翔ちゃんの身体から力が抜けた。
「好きだよ…翔ちゃん…」
「智くん…」
次の日、快晴だった。
だから俺達は自分たちで下山した。
ロッジは大変な騒ぎにはなってたけど、捜索隊が出る前だったから、大事にはならなかった。
相葉ちゃんと潤は半泣きになってた。
ニノは怒ってた。
ホテルに帰って熱い風呂に入ったら、あれが一体現実だったのか、わからなくなった。
翔ちゃんの白い身体
俺に絡みつく腕
吐息を吐き出す唇
潤んだ瞳
イった時の声
その全て、鮮明に思い出せるのに現実感がなかった。
「夢、だったのかなあ…」
だって、翔ちゃんはニノのものだもん
あれは夢
雪が見せた、一晩だけの夢…
翔ちゃんの囁く声が耳に蘇った
”これは、夢だからね…智くん…”
END