第7章 グレイ scene5
それは本当に偶然だった。
あの雑誌の記事が出てから、潤はずっと元気がなかった。
大きなイメージダウン…
そう言われるほど、醜悪な記事だった。
副社長から、言われたことだから…断れなかった。
こういうのも、俺達の仕事の内ではある。
高いギャラには、こういうスキャンダルを被るってことの意味も含まれている。
それもアイドルみたいな人気商売の仕事のうちのひとつ。
俺達は、人形だから。
それでも表向きの処分として、潤は仕事以外は謹慎になっていた。
何の制裁もないのはおかしいからね。
毎日鬱々としている潤を、俺はただ見ているしかなかった。
なんて声をかけたらいいかわからない。
口下手な自分を恨んだ。
あんまり賢くもない自分は、掛ける言葉を持っていなかった。
だけど偶然…ほんとに偶然、そのシーンを目撃してしまった。
本番前に入ったトイレ。
いつもだったら翔ちゃんに出会う。
だけど、その時出会ったのは潤だった。
「あれ~珍しいね…」
その後、言葉を継げなかった。
だって、潤の目が真っ赤だったから。
「…どうしたの…」
「なんでもない」
顔を背けると、せっかくメイクが終わってるのに洗面台で顔を洗い始めた。