第7章 グレイ scene5
潤が両手を捻挫した。
「なんでそんなことになるわけ…?」
「いや…俺にもよく…」
こう見えて、潤は多少運動音痴だ。
それをカバーすべく、日夜ジム通いにテニスにと精を出しているが、いっかな、生まれ持ったものというのはしつこいもので…
通ってるテニスコートでコケたとき、両手をついて顔は守ったけど、手首は犠牲になったってわけ。
「さすがトランポリンでおでこ擦るだけあるわ…」
「うっ…うっせー!」
なさけな~い顔をしながら、潤はソファでただ座ってる。
両手が使えないんだから、することもなく暇そう。
そんな潤の横で、俺はゲームに興じている。
「なあ…」
「んー?」
「なんか喋ろうぜ」
「なにを?」
12年目の俺たちは、今更新鮮に話すことなどもなく。
暫く見つめ合って、諦めた。
「じゃあ、愛を囁やこう」
「どうやって?」
両手が使えないのに、愛を囁いたってストレスが溜まるだけじゃないか。
「んあ~…手が使えないって不便だな…」
そう言って潤は両手をソファの背もたれに載せた。
「飲ませろ」
「は?」
くいっと顎をテーブルに指す。
テーブルの上には、ストローを刺したペットボトル。
「…はいはい…」
しょうがないから飲ませてやった。