第7章 グレイ scene5
「ただいま」
「おかえり、和也」
「どうしたの?今日早いね」
「ん。早く終わったから…」
「そっか…」
ソファに座る後ろ姿…
いつもの風景。
「どした…?」
後ろから抱きつく俺の髪をふんわりと撫でてくれる。
「…んーん…こうしたかっただけ…」
抱きついた襟元から、見えた赤い花びら
「ねえ、抱っこして?智…」
「ふ……ほら、来いよ」
いつもと違う香水の匂い
「智…俺のこと、愛してる?」
「愛してる…」
私の首筋にも、嘘はあるの
「俺も…愛してる…」
全ては、あなたを離さないため
壊れた時間が戻らないなら
俺は時間を壊し続ける
「ニノ…俺のものになって…?」
「潤くん…だめだよ…」
新しいあなたを手に入れ続けるために
「和也、今度の休みさ、旅行行く?」
「え…?いいの?」
「うん…たまには、ゆっくりしようよ」
「あなたしょっちゅうゆっくりしてるじゃない」
「あ、そういうこと言う」
「言いますよ?釣りばっか行ってるじゃない」
「おまえも船に乗らすぞ!」
「やあだあ!ゲロ吹きかけるぞ!」
「おお…やれるもんならやってみろ!」
「ホントにやるからね…?」
「…ごめんなさい…」
今日も俺は嘘を着て歩く
END