【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
海面へ上昇した舳丸は大きく息を吐いた。
次にその片腕に担いだ麻言の安否を目で確認する。
「―ごほっ、げほっ」
飲み込んだ海水を吐き出す麻言を見て
ホッとしたように息をついた。
「大丈夫かーっ!?舳丸ーっ」
やっと少し船酔いが落ち着いたのか、
船上から兵庫第三協栄丸が手を降っていた。
「ええっ、無事ですっ。―こっちの少年も…っ」
舳丸がそう言うと、兵庫第三協栄丸も
後ろにいた水夫達も安心した顔つきになった。
「こいつは…きちんと礼を言わねばならんな」
皆声を出して「うんうん」と何度も頷いた。
「では、引き上げてくださ…ん?」
そう船上へ向かって言いかけたが、
肩に担いだ麻言が舳丸の袖を小さく引っ張っていたのだ。
「どうした?」
「…さっきの人無事でした?」
ぐったりしつつも心配そうに麻言が訊いた。
その言葉に合点がいったようで
「重は…仲間は大丈夫だ」
少し戸惑いつつもそう短く答えた。
すると。
「そっか…。良かった…」
そう言って、へにゃりと笑った。
「…っ!」
麻言の表情を見て、
心臓が一瞬大きく脈打ったことに舳丸は気づいた。
何故か、妙に顔まで熱い。
舳丸は今起きた事が何なのか解らなかったが、頭を振って気のせいだと片付ける事にした。
その感情に彼が気付くのはもう少し後のことになる。