第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
クレイオの言葉はいったい、どのように伝わったのだろう。
ゾロは抱きしめていた腕を解くと、身体を起こしてクレイオを見下ろした。
その目にはもう、先ほどまでの野獣のような鋭さはない。
ただ、静かにクレイオを見つめている。
「おれは神とか聖母とかよく分からねェし、興味もねェ」
はだけたままの胸元を隠すように毛布をかぶせ、その上から肩にキスを落とす。
「自分の欲望を隠すつもりもねェよ。だがな・・・」
この答えがお前の望むものかどうかは分からない。
ただ、伝えておかなければならないと思った。
「自分の欲望の後始末とケジメは必ずつける」
クレイオ、お前がおれのことをどう思っていようが関係ねェ。
いつかお前が許せば抱くつもりでいるし、その結果、何が起ころうと自分のケツは自分で拭く。
だからその時がきたら、お前は黙って抱かれていればいいんだ。
「お前が腹を括ったら、おれは孕ませることになろうが抱くつもりでいる」
その“結果”の責任は、全ておれが取る。
でも、それが嫌なら・・・おれを信用できねェっていうなら・・・そうやって拒否し続ければいい。
こっちはお前の手や口を使って性欲を満たすだけだ。
「最低な男・・・」
そう言って見上げたクレイオは微笑んでいて。
「最低で結構。おれは神じゃねェからな」
海賊は口の端を上げながら、聖母を崇める女の唇にキスをした。
この時、二人の心の距離はほんの少しだけ縮まったのかもしれない。
少なくとも、クレイオの顔には笑顔が浮かんでいた。
しかし、1週間後───
新聞を配達するカモメ“ニュース・クー”がシッケアール王国に落とした新聞をキッカケとして、二人の関係は大きく変化していった。