第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
年齢はナミと同じくらいか。
しかし、顔は疲れ切って、髪には白髪のようなものも混じっている。
実年齢よりも遥かに老けて見えた。
二人は出口のところまで来ると、男が急に娼婦の髪を鷲掴みにする。
そして強引に上を向かせると、遠慮なしに唇にキスをした。
彼らのそんな姿は珍しいものではないのか、店にいた客も、娼婦達も見て見ぬフリをしている。
満足そうな顔をしている男と、無表情の女。
ゾロはビールを喉に流し込みながら、何故かその二人の姿から目を離せずにいた。
「・・・・・・・・・」
娼婦は男の興奮を誘うためか、胸元が広く開いたワンピースを着ているが、体の細さを一層強調させているだけで痛々しい。
女のファッションには微塵も興味がないが、“似合わねェな”と無意識のうちに思ってしまう。
しかし、その娼婦は元来、気の強い性格なのだろう。
名残惜しそうに店を出ていく男に媚びる様子もなく、ゾロとは反対側のカウンターの端に腰を下ろすと、店主に一杯の水をねだった。
疲れ切った様子から、これまで先ほどの大男の“相手”をしていたのは明らかだ。
相当激しかったのか、腰を気にするそぶりも見せている。
「お客さん、彼女のことが気になるんで?」
「あ?」
ゾロが娼婦のことを見ているのに気が付いた店主が、3杯目のビールを注ぎながら声をかけてきた。
「別に、そういうわけじゃねェ」
「あの子でもいいが、果たして今日は使い物になるかどうか」
その口ぶりだと、店主はさっきの客がどのように女を抱くのか分かっているようだ。
それを知っていて、ナミとさほど年が変わらない彼女を客につかせているというのか。