第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「おれは何度も死にかけたことあるけど、その度に仲間や周りの奴らに助けてもらってるんだ!」
それは自慢するようなことなのだろうか? と疑ってしまうようなことも、ルフィは胸を張って口にする。
人間は一人では生きていけない。
至極当たり前のことでありながら、簡単に忘れてしまう事実だ。
「ルフィの仲間って、どんな人?」
「いろいろいるぞ」
方向音痴の剣士
宝物大好きの航海士
嘘つきの狙撃手
女好きのコック
バケモノの船医
何でも知っている考古学者
サイボーグの船大工
ガイコツの音楽家
ルフィはどの仲間のことも、とても誇らしそうに語る。
さらに、ゴーイングメリー号に代わる、新たな仲間のサウザンドサニー号のことも教えてくれた。
「おれ、あいつらがいないと何もできねェ。一人じゃ生きていけない自信あるからな!」
「本当にいい仲間達なのね・・・」
「クレイオだって、お前の周りには優しい奴らばかりだ」
満天の星空の下。
大木の枝に腰掛け、両足をぶらつかせているルフィには、自分を取り巻く全てのものの“声”を感じているのだろうか。
潮の香りがする夜風を気持ち良さそうに受けながら、ニコリと笑う。
「お前の隣にいるとすげェあったかい」
たとえば、誰の目にも留まらない道端に咲く小さな花。
手入れが施された庭園に咲くバラのように美しくも豪華でもないが、しっかりと咲いているのはその花を豊かな土が守っているから。
しおれそうになれば、空から雨水が落ちてくる。
人の手が無くとも、自然が“生きろ”と語りかけ、その小さな花を守ろうとする。
全ての命がそうやって守られているわけではない。
どんなに美しくても、守られずに死んでいく命もある。
同時に、守られている全ての命が、バラのように美しいわけでもない。