第8章 CHAMOMILE
金曜日、仕事を早めに切り上げた午後3時。
指定の場所に来た私は唖然とした。
何度住所を確かめても間違いない。
目の前には、かの有名なサロン EMPORIO
それもオーナー所在の本店。
系列店でも予約は半年待ちなのに本店では、予約で1年待ちは当たり前の超人気店。
恐る恐るドアを開けて入った先には、衝撃が待っていた。
「ヴァナタ、ね!
クロコボーイから話は聞いてるわ!!
今日はヴァターシが直々に施術してあげるわ、準備はいい?」
どアップで私を迎えたのは、雑誌でよく見るオーナー、イワンコフ。
シワやシミが無いその顔は惚れ惚れするぐらいに綺麗だった。
「さア、時間が惜しいわ。行くわよ!」
「もう先に行きました」
他の店員に案内され別室へ向かう。
「自由か!ヒーハー!!」
通された部屋は、広々としてた室内。
ロココ調で、優雅な造りの部屋になっていた。
ソファー、簡易ベッド、シャワールーム、ドレッサー、3面全身鏡。
そこには、煌びやかなアクセサリー類とトルソーに1着のドレスが着せられていた。
『私、ドレスを受け取りに来ただけなんですが・・』
「ンフフ、クロコボーイから聞いてない?
今日は全身コーデを頼まれたのよ〜」
時間が惜しいわとイワンコフは、私をベッドに誘う。
「あのクロコボーイが直々に頼む娘っ子だけあって、申し分無いけどちょっと疲れが溜まっているようね!」
施術から始めるわと、意気込むイワンコフに私は成されるがまま。
人体を熟知し、自在にホルモンを操るというイワンコフの施術。
私は、ゴクリと唾を飲み込んだ。