第29章 MIMOSA
「ゾロを好きじゃねぇんだな?」
『・・はい、何とも思ってないよ。
他に気になる人がいるって気付きましたから』
「・・・誰だ?」
『内緒です』
教えない。
教えたくない。
まだ、気付いたばかりの小さな恋心。
誰にも知られなくなかった。
「・・・」
『に、睨んでも教えませんよ』
「チッ・・、まぁ、いい。
寝るぞ」
グラスにさっきの飲み物をまた注いだドフラミンゴは、それを持って歩き出した。
私も後を追って行くと、そこは寝室。
目覚めた時に寝ていた部屋だった。
枕をクッション代わりにして脚を投げ出し座るドフラミンゴの横にちょこんと座る。
「乾杯」
グラスを差し出され、慌てて合わせた。
甲高い音が鳴る。
『これ、何ですか?』
「ブランデー、寝酒にでも飲め」
促され1口、口に含む。
う"うぅぅ!?
『ゲホゲホ・・、これ何?!』
喉を通った瞬間、焼ける様な熱が灯る。
カッと熱くなる身体。
「レミーマルタン 13世」
れ、レミー?
とりあえず・・
『いろんな意味で馬鹿高そうなお酒ですね・・』
詳しくは知りたくない。
値段もアルコール度数も信じられない数字が出てきそうだ。
「フフフ・・、お姫さんはまだまだお子様口だな」
あっ、いつものドフラミンゴだ。
浴室を出てからどんな態度でいればいいのかと悩んでいたが、当の本人はいたって普通、いつもと変わらない。
浴室にいた時と比べると別人だと思うぐらい違う。
「うん?何だ?」
私の視線に気付き、首を傾げてくる。
『ううん、いつものドフラミンゴさんだなと思って・・』
「・・・へーぇ、じゃいつものじゃない俺ってどんな感じなんだ?」
どんな感じって・・
『そうだな・・
助けてくれた時みたいな恐い顔や声も初めてだったし、さっきみたいな妖艶?色っぽい?なのも初めて見ました・・よ』
「へーぇ、そう見えたのか」
言っていて恥ずかしくなった。
ニヤニヤした顔で見てくるドフラミンゴのせいだ。
何であんな事言っちゃったの?!
「なぁ、どっちの俺がいい?」
えっ?
「お姫さんが見たい俺の顔ってどれがいいんだ?」
『・・・どれって言われても・・全部・・かな』
「!!?」
どれもドフラミンゴの顔なら全て見て見たい。
そう、思ったんだ。