第2章 サクラ散る頃
「あ~!夢主(妹)のお弁当にお箸入れるのまた忘れた!」
夢主(姉)ちゃんがわめいてる。
「僕が夢主(妹)ちゃんに届けに行ってあげるよ。」
「ん…?」
「相変わらず頭が悪いよね。」
そう言えば夢主(姉)ちゃんだって僕の言いたいことを察してくれるはずだ。
「………」
小さく「ありがと」と言ってお箸を渡された。
別にイイヒトになるつもりはないよ。
ただの暇つぶし。それと、夢主(妹)ちゃんに会いに行く口実にもなるしね。
僕が自分から女のコに会いに行くなんてめずらしい。
――あ、沖田先輩だ!
――超イケメンだよね
ああもうめんどくさい。
僕が廊下を歩くと、こんなヒソヒソした声が聞こえてくる。
たまに声をかけられたりするけど、僕の反応が気に入らないみたいで、
――沖田先輩って冷たい人なんだよ。
ってまたヒソヒソされたりして。
それが僕の話し方なんだけど。
入学したばっかりの頃の、告白ラッシュはほんとに吐き気がするくらい嫌だった。
夢主(姉)ちゃんと一緒にいるようになったら、その告白ラッシュもぴったり止んでくれたんだよね。
夢主(姉)ちゃんにはかなわないってみんな思うのかな。
外見だけでそうやって判断されてさ。全く失礼な話だよ。
それに僕達、別に恋人じゃないんだけど。
夢主(姉)ちゃんとは一年の頃から仲がいいけど、どういうわけか恋心は生まれない。
男だとか女だとかだけで噂されて、それすらめんどくさい。
えーっと…夢主(妹)ちゃんのクラスは…A組だったよね。
ほらやっぱり…あの子と一緒にいるじゃない。来なくて正解だったよ夢主(姉)ちゃん。
夢主(妹)ちゃんにお箸を渡して、会いたかったんだよ、と伝えると、かわいいなぁ…真っ赤になっちゃった。
「か、からかわないでください!」
ってからかってるつもりはないんだけどな。
しょうがないじゃない。夢主(妹)ちゃんには会いたくなるんだ。
ああそうだ…このコ。雪村千鶴ちゃん。
こんなに真面目そうで真っ白な雰囲気のコ…一君にぴったりじゃない。それにこのなんとも言えない空気。夢主(姉)ちゃん…かなわないよきっと。
夢主(姉)ちゃん、君もそう思ったんでしょ?