第2章 サクラ散る頃
土方先生の元へ行くと、
「なんだ…斎藤と雪村なんて、めずらしい組み合わせじゃねぇか。」
タバコの灰を落としながら私達を見て言った。
「さっき、ノートを落としてしまって…斎藤先輩が拾ってくださって…」
「…なるほどな」
「では俺はこれで」
斎藤先輩はそのまま職員室の出口に向かって歩きだした。私はその背中に、ありがとうございましたと、改めてお礼を言う。
「ああ斎藤!」
「はい」
土方先生は斎藤先輩を引き止めたけれど、ちらっと私に目をうつして、
「……あ~…やっぱいい。」
と言った。
「……では」
斎藤先輩は職員室をでていった。
職員室から教室への帰り道、私は斎藤先輩に会えたことに浮かれ、しかも一緒に職員室まで行ってくれた斎藤先輩を思い出して今更顔が熱くなった。
うれしいうれしい。
ノートを拾ってくれた斎藤先輩、持ってくれた斎藤先輩、私の少し前を歩く斎藤先輩…土方先生と会話をする斎藤先輩…
そのすべてにドキドキした。
教室に戻っても、授業がはじまっても、このドキドキが止まらなかった。