第2章 サクラ散る頃
「どうだった?夢主(妹)ちゃん。僕のこと好きになったでしょう?」
ニヤリとしながら悪びれもなく言う沖田先輩に、
「は…はい」
うっかり返事をしてしまう。
「あはは。夢主(妹)ちゃん、君おもしろいね。素直で可愛いい子は僕も好きだよ?」
冗談きついぜ…って言葉が今ぴったり。
なんか恥ずかしくなってきた。
「沖田先輩ちょ~…かっこよかった…デス。デス。」
かろうじて出た言葉は軽薄そのものな賛美の言葉。
「ありがとう夢主(妹)ちゃん。ねえ、君の腕も見てみたいんだけど…明日胴着一式持ってきて、練習参加してみない?」
沖田先輩はそう言って、井上先生に許可を仰ぐ。
「今月中は入部はできないけれど、練習に参加するのは構わないよ。」
「よし。じゃあ夢主(妹)ちゃん約束だよ?」
沖田先輩はそう言ってウィンクしてきた。
なんなのこの人…これはまずいかもしれない…
いまだドキドキが大全開な私は、ふと隣に座る、千鶴のことを思い出した。
はっ…私、ドキドキしてる場合じゃなかったんだった!!
ごめん千鶴…と、千鶴を見れば、やっぱりさっきの試合が衝撃的すぎたみたいだ。
ぽ~っと一点を見つめている。
「…ところで、そっちの君…千鶴ちゃんだっけ?僕より一君に夢中みたいだけど…」
「えっ…あの…」
「マネージャー希望なんて珍しいけど、君にもいろいろ教えるから、明日もきてよ。」
「は、はい!」
「平助の幼なじみなんだよね?あんまり一君ばっかり見てると、平助がいじけちゃうよ?」
「そんなこと…」
沖田先輩はニヤニヤしてる。この人…やっぱりひねくれ者だよね…
それから終わる時間まで稽古を見学した。
暗くなった道のりは危ないから、と、私のことは沖田先輩が送ってくれることになった。
千鶴は、幼なじみの平助先輩とまさかの斎藤先輩が同じ方向ということで、一緒に帰っていった。
大丈夫かな……
千鶴が心配なのは山々だけど・・・私も帰り道、沖田先輩と二人きりだと思えば緊張する。
私こそ大丈夫かな…と自分の心配をするのに精一杯だった。