第1章 オムライス
「何でもいいかー…うーん…」
アヤセは頭を抱える。
「二人らしいよね。」
ルイが微笑む。
「誕生日でしょ?アイツの。」
アヤセはドキリとする。
「ル、ルイにはわかっちゃうね…」
「まぁね。
アヤセは誕生日のとき
何をもらったの?」
「たくさんの靴…
30足ぐらいあったかな。」
「へぇ…アイツやるじゃん。」
クスリと笑いながら
ルイは遠くを見つめる。
「アヤセ、手料理とかは?
作ったことある?」
「んー簡単な朝ごはんぐらいなら…
卵焼くとか、野菜切るとか…
料理じゃないね…」
アヤセは苦笑いをする。
「料理は苦手?」
「うーん…得意でも苦手でもない…
普通かな…
でももし作るとして何を作ろう?
ルイ、シドの好きなもの知ってる?」
「あんまりアイツと
そういう話しないから
わからないけど、
1つだけオススメなのがあるよ。」
「何?」
「オムライス。」
「ぷっ…」
アヤセは思わず吹き出してしまった。
「…?」
「ご、ごめんね。
シドってあんな感じなのに
普通にベタなもの好きなんだなぁって。
オムライスって、私の国でも
彼女が彼氏に作ってあげる
代表みたいな料理なの。
男の人、みんな好きだよね。
ウィスタリアでも同じなのかな。」
「まぁ否定はできないかな。
俺も好きだし。
昔ね、アイツが俺んとこに
家庭教師に来てたとき、
よくお昼ごはんで食べてたんだ。
オムライスのときは
やたら機嫌よかったから
たぶん好きだったんだと思うよ。」
そのときアヤセの
胸にちょっとした寂しさがよぎる。
(私の知らないシドを
ルイは知ってるんだよね…)