第30章 Suspicion
翌日…
非番だった俺は、長瀬さんの元で、住み込みで働く松本の元を尋ねた。
岡田には何も告げずに…
一人で尋ねた俺を、長瀬さんは一瞬不思議そうに首を傾げたが、松本に確認したいことを告げると、疑うことなく俺を工場奥の応接間に通してくれた。
「すぐ呼んで来ますんで」
「急にすいません…」
俺が頭を下げると、長瀬さんは「とんでもない」と頭を掻きながら部屋を出ていった。
その瞬間、俺の心臓が有り得ない速度で脈打ち始めた。
カラカラに乾いた喉を、出されたお茶で潤し、俺はフッと息を吐き出した。
その時、
「どうも…」
と、作業着姿の松本がドアを開けた。
「あの、俺に話って…?」
「ああ、取り敢えず座ってくれるかな?」
作業着に着いた埃を払い、松本が俺の目の前に座る。
それと同時に、胸のポケットに忍ばせておいた一枚の写真を、テーブルの上に置いた。
「この人に見覚えは…?」
松本が写真を手に取り、食い入るように見つめる。
「君に刑期の短縮を持ちかけたのは、この人じゃなかったか?」
どうか…
どうか違うと言ってくれ…
俺は祈る気持ちで松本の顔を見つめた。
「どう…かな…? 君の知ってる人…だったかな?」
問いかけた声が自然と震えているのが、自分でも分かった。