第30章 Suspicion
「でもおかしいんですよね…」
深山さんが首を捻る。
最近気付いたことだけど、彼がこうした仕草をする時は、大体何か引っかかる物がある時だ。
「何が?」
「いえね、警察署はともかくとして、検察にまで箝口令敷くとなると、相当な圧力だな、って…」
確かにそうだ。
一般人ならともかく、曲がりなりにも俺達は弁護士だ。
その弁護士にまで口を塞ぐなんて…
有り得ないことではないだろうが、そうある事じゃない。
「それって…、俺達の知らない所で、何か大きな権力が働いてる、ってこと…?」
考えたくはないけど…
「まあ、そうなります…よね…、岡田さん」
深山さんがチラリと岡田を見やる。
でも岡田はそれには答えず、まるで苦虫を噛み潰したような顔を崩そうともしない。
「とりあえず、俺は一度事務所に戻りますね。また何か分かったら連絡します」
「ああ、頼むよ」
俺は深山さんに軽く手を振ると、岡田のデスクの上に散乱した鉛筆やら、書類やらを纏めにかかった。
「なあ、櫻井。お前はどう思う? 深山の言う通り、権力ってのが働いてると思うか?」
いつも通り…とまでは行かなくとも、多少冷静さを取り戻した岡田が、俺を見上げた。
「分からないよ…。でもその可能性はゼロではないのかも…」
事実、父さんの言ってた事がこうして現実となって…
「あっ…」
まさか…そんな筈は…
違う…、いや、違うと信じたい…
でも…