第13章 買い物
敦や谷崎から聞いていた
乱歩が認める程の推理力――。
太宰と国木田が云っていた
敵に回したら厄介な異能力――。
「…気を付けるンだよ。」
実際に目にしたのは初めてであった与謝野は反論を止めた。
「はーい。じゃあ5分で戻ってくるからー。」
鍵が閉まっていた筈の扉が開き、行ってきまーすと緊張感無く云いながら手を振って出ていくアリスを全員で見送る。
「「「って、5分!?」」」
予想に反する短さに、閉まった扉に全員でツッコミをいれた。
―――
「僕がもっと早く気付いていれば…!」
「否、敦君のせいじゃ無いよ。」
「そうだよ。自分を責めるのは止め給え。保護者が同伴ならそう思うのも仕方がないことだ。」
「そうだ、敦。それを云うなら太宰も同罪だからな。」
太宰からの連絡を受けて寮の下に集まった、国木田、谷崎、敦。
「で?何処に向かえばいい?」
「今、連絡待―――」
ピリリ…。
国木田の質問に答えるのと同時に着信音が鳴り響く。
その電話に出る太宰。
「はいはーい。」
「……普通、拐われたら電話って一番に取られませんかね?」
「そうでなくても万一に備えて妨害電波を発してる筈なンだけど。」
「電話の主はアリスだろうからな。」
「「あー……」」
アリスの名前を聞いただけで納得してしまう敦と谷崎。
「――直ぐに向かうよ。」
そう告げて電話を切る。
「判ったか?」
「倉庫街と海が見える建物らしい。」
「……それだけか?」
「敵が思ったより多過ぎるようだね。もしかしたら厄介な組織が関わってるかも知れないらしい。」
「厄介な組織って……」
「まだなんとも云えないけれど。何れにしても急がねば危険だ。」
先刻まで普通だった太宰が、少し焦りを見せる。
「そうですね。早くしないと異国に売られてしまいます!」
「否…そうではないよ。」
「「?」」
「急いで止めないといけないのはアリスの方だ。」
「「「!」」」
太宰が告げると国木田が眉間に皺を寄せる程、苦い顔をしている。
「二手に分かれよう。国木田君と敦君は警察の方を当たってこの誘拐について調べてくれるかい?」
「解った。」
「解りました。」
「谷崎君は私と潜入するよ。」
「はい。」
太宰が素早く指示を出し、それに応じるとその場を散った。