第13章 買い物
慌てて大声で制止する与謝野とは反対に、アリスは小声で呟きながら考え込む。
その考えが纏まったのか
「尚更、独りで動いた方がいい。大勢で動いたりしたら見つかったときに面倒事が増える。」
アリスは与謝野に静かに告げる。
「見付かった時に大変なのは大勢も独りも一緒だよ。」
それまで黙っていた鏡花の言葉に首を横に振る。
「一緒じゃないよ。恐らく私達を拐ったのは奴隷商。そのまま売るか、パーツにバラして売るかは今から決める筈。」
アリスの説明に怯えながら耳を傾ける女達。
「あの……パーツって?」
その中の一人が恐る恐る訊ねる。
与謝野より少し若いくらいの女性だ。
「臓器だよ。」
「「!?」」
与謝野と鏡花以外が一瞬で青褪める。
「三日も前から捕まってる人間がいるのに、殺されずにいることを踏まえて考えれば…この時点で目的が臓器売買の確率は20パーセント。」
「意外と低いねェ。」
「それだけならね。只、女の奴隷が欲しいだけの可能性の方がまだ高い。」
「じゃあ!取り敢えず私達は殺されずに済むの?」
別の女がアリスに質問する。「生きていれば何とかなるかもしれないから泣かないで」と、隣で泣き出した友人を励ましている。
「………悪いけど未だ続きがあるんだよ。」
「!?」
その光景に眉間にシワを寄せて話を続ける。
「『異国の言葉を話す連中』――異国が関わってることを加えたら―――臓器目的の確率80パーセントまで上がる。」
「何だッて!?どうしてそんなに確率が上がるンだい!?」
「バラすのはリスクが高いからね。異国に生きたまま売り付けた方が低リスクで確実に金が入る。それに考えてもみてよ。何かを説明するのに必要になるモノって矢っ張り『言葉』でしょ?躾けるのだって暴力だけじゃ成り立たない。それなのに異国の男達に売り払う心算でいるんだから其れは詰まるところ、言葉が要らないと同意。」
「「「!!!」」」
「今20ちょいの人間が居るから、このままなら生き残れるのは精々、4~5人かな。」
アリスは其処まで話終わると扉の前に移動する。
「此処で大勢動いて見付かった場合、異国に移送される時間を早められる可能性が上がる。そうなったら治兄達が間に合わない。」
「……。」