第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
『ありがとう』
涙を流しながらにっこりと微笑んだ彼女は、今まで見てきた中で一番綺麗ですぐにでも消えてしまいそうだった。
『だけど…私「好きなんだ、君のことが」
結木の言葉を遮って、真剣に目を見つめた。
大きな瞳が、揺れる。
困らせているとわかっていても、止まらなかった。
「…僕なら、僕は…君を泣かせたりしないよ。他に好きな子なんて、いない。結木のことだけが好き…」
だからお願い、断らないで…。
半ば懇願のように、言葉を繋いだ。
みっともないことは、分かってる。
それでも伝えないではいられなかった。
『……月島くんを利用するかもしれないよ、私』
夏希を忘れようとして。
彼女はそう続けた。
「忘れさせてあげる」
たったそんなことで、君が手に入るなら何だってできる。