第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
『……夏希ね、他に好きな子がいたんだって。私は…2番目だったんだって』
しばらく泣いて落ち着いたのか、彼女がぽつりぽつりと話してくれた。
いつものようにブランコを漕ぎながら、ゆっくりと。
『…本当はね、うっすら分かってた。夏希の気持ちが…、離れていってること』
きぃ、きぃ…。
小さくブランコの音がする。
『だけど……それでも、好きだったんだ…凄く……』
結木の声がだんだん掠れて、小さくなっていった。
考えるより先に体が動いていた。
か細い結木の肩を引き寄せて、抱きしめた。
揺れるポニーテールが、すぐ横にある。
ぎゅぅ、と少しだけ力を強めると、また彼女は小さく肩を震わせて泣き出した。
「…僕に、しなよ」
もう、辛そうな結木は見ていられなかった。
また笑っていて欲しい。
君が泣いてるのは、僕まで悲しくなるから。
「僕……僕は、結木が…」
言葉が詰まって出てこない。
あんなに、心の中で伝えてたことが、いざとなったらつっかえてしまって、言えない。
『っ…つきしま、くん…』
結木の腕が、やんわりと僕の体を引き離した。