第14章 アップルパイよりも甘く ♥︎ 〜孤爪研磨〜
どんどん寒さを増した、11月も終わりに近づいたある日。ことは起こった。
元凶は、部活が終わった後の愛しの研磨くん…の幼なじみ、黒尾先輩の一言だった。
「お菓子が作れるマネージャーって、いいよな」
「クロ…何言ってんの」
「研磨だって、もしもマネージャーがアップルパイ作れたら嬉しいだろ?」
「………嬉しくないわけでは、ない…」
「ほぅら!やっぱり!!やっぱり女子はお菓子作り上手な方が嬉しいよな!」
『…料理下手で悪かったですね』
2人の会話の最中、思わず割って入ってしまった。
そう、あたしはすごく料理が下手。
…料理が、と言うよりかは、細かいことがすこぶる苦手。
去年の合宿で、カレーを作ったけれど、見事に大失敗。
梟谷のマネージャーの白福さんが作ったものを、音駒に分けてもらうという形にしてしまった。
それ以来、あたしの作るものは、誰も食べてはくれない…。
「あっ…えっとだな」
「…結木は、そのままでも、いいと思う。無理しないで」
『……ぐす』