第11章 【甘】とっておきのお菓子/及川徹・岩泉一
「で、遥香は何してんだ?」
「徹とはじめちゃんに会いたくなったから。」
二人が落ち込んでないか心配で、なんて事は口が裂けても言えなかった。会いたかったのは事実だし、嘘じゃない。
「折角私が会いに来てあげたんだから、はい、二人共これに着替えて。」
そう言ってキャリーバッグから徹とはじめちゃんに洋服を渡した。
「私も着替えるから、徹とはじめちゃんリビングででも着替えてきて。」
返事を聞く前に二人を部屋から追い出した。返事なんか聞いたらはじめちゃんに断られるだろうし。だから強引さが大事なのだ。
そして私もキャリーバッグから洋服を取り出した。演劇部に入ってる為、本格的な衣装を簡単に調達する事が出来た。まあ、勝手に拝借してきたんだけど。まあ、土日で部活は休みだし、発表会が近いわけでもないから問題ない…はず。