白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
『はい、大丈夫ですよ
チョット待ってて下さいね…
茄子高いな…どうしよ…』
野菜とにらめっこしながら
応える姫凪ちゃん
「孤爪チャンが買ってくれるんじゃないの?」
『そうだけど…安くて美味しいものが
出来た方が良いじゃないですか
やっぱり茄子を止めて山芋に…』
「何作るの?」
『天ぷら。
さっき鉄朗が白身の魚も買ってたから
天ぷら食べたいんだろうなって思って…
それなら野菜も一緒にって…』
俺を振り返らず
ブツブツ言いながら
茄子を取ったり戻したり
きっとクロちゃんが
茄子を好きなんだろうなとか
天ぷら作って喜ばれたんだろうなとか
聞かなくても浮かんで来る
さっきナナに繋がらなかった
寂しさのせいかな
『よし、やっぱり山芋に…』
「及川さん天ぷら無理ー」
意地悪言っちゃった。
『え、そうなんですか
じゃあ…止めましょうか?
あの、お野菜は…』
「野菜も魚も大丈夫。
でも肉のが好きかな?
ねぇ、肉料理なにか得意なのないの?」
普通に天ぷらは好きなのに
何言ってんだろ。