白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
私もさすがにそれは
可哀想だと言おうとしたけど
「酷いね!
及川さん頑張ったのに!」
「…まぁ、その理由は
宮城の支社長から
ジックリ聞いてくれ
とりあえず送別会しない事になったから
俺らでだけでもと思ってたのに…」
及川さんを睨みながら
ブツブツと言葉を濁す鉄朗に
一応声を飲み込んだ
揉めたくないのが
一番の理由だけど…
それを上回る
何か嫌な予感…。
『鉄…黒尾さん。
あの、送別会なしって
もしかして…』
またすぐこっちに来るから
送別会の意味がないって事なんじゃ…?
しかも、こんな短期間で何回も
出張なんて変よね?
と、言う事は…
「なに?姫凪ちゃんは
そうなった方が嬉しいんですかァ?」
『え?いや、別に…
どうしたの?』
「なんでもありません~
今日は残業なしで皆帰るぞ!
研磨にも声一応声かけたから
皆で買い物して家で
お疲れ様会しような!」
『は、はい。
美味しいご飯作りますね』
まさかね?及川さんとは
このままオツカレサマデシタで別れて
会う事もほとんどなくなるんだから
送別会がないのも
本当にたまたま皆に予定があっただけで
深い意味なんかない
そうに決まってる
無理矢理に自分を納得させて
午後からの仕事に励んだ
私の予感が的中して
それが大きな転機になるなんて
思いもしなかった
…思いたくなかった。