Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第12章 過去にサヨナラ《赤葦 京治》
後で聞いた話だけど、京治はお父様の部下の役員の息子だったそうだ。不運なことに、家族が交通事故で急逝。身寄りも無く、身の振り方に困っていた彼を、お父様が引き取ったらしい。
そんなことは知らない私。けーじ、けーじ!と呼んでは、遊んだりしていた。年齢が近いこともあって、とても楽しかった。
じいやができないかくれんぼや、ばあやにナイショでお菓子を作ったり。他の子みたいに遊びたいと思っていた私には、夢のような毎日だった。
珍しくお父様が来た日、あれは京治が来てから2ヶ月が経った頃だった。
扉の向こうからヒソヒソと話す声。好奇心に駆られてこっそりと盗み聞きをする。
「娘のことを頼む。どうか、ずっと側で見守ってやってくれ…」
「はい、命に代えましても…」
そんな会話が聞こえた。お父様が京治になにかをお願いしている、ということだけは辛うじて分かった。子供だった私は次の日にはそのことをすっかり忘れていた。
それから12年間、彼は片時も離れずに私の側にいてくれた。
ばあやに叱られてメソメソ泣いた日も、雷が鳴り響く嵐の夜も、高校入試の合格発表の時も、ずっと、隣にいてくれた。
そう、あの時も―――