Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第12章 過去にサヨナラ《赤葦 京治》
【蒼井 side】
"OwlGroup"
それは、世界各地で活躍する日本企業。主に電子機器や精密機械などを生産、販売している。携帯やパソコンなども手掛けており、その売り上げは業界でも1,2を争う。
私がそこの社長令嬢として産まれたのは、今から23年前、ある冬の日のことだった。
病弱な母は私を産んですぐに他界。仕事で忙しい父は渡しに構う暇も無く、会えるのは月に1度きり。
「勉強、頑張ってるな」
5歳の娘を不器用な父が褒めてくれるのは、勉強で頑張ってる時。だから、難しくても、ひらがなもカタカナも、掛け算だって頑張った。
毎日を黙々と勉強して過ごす私の元に彼が現れたのは、6歳の誕生日だった。
「赤葦京治です。今日からここで貴女の執事として働くことになりました。どうかよろしくお願いします」
真新しい子供用のスーツに身を包んだ彼は、まだ12歳だというから驚きだ。
『あの、よろしくね…』
「なんとお呼びすれば良いでしょうか?」
『う~ん…海宙って呼んで!』
「畏まりました、海宙お嬢様」
きっちりとお辞儀をするその姿は、その辺の大人よりも立派に見えた。
それから、京治と私の新しい毎日が始まった。
そしてこれからここに綴るのは、彼と私に起きた、ほんの1部分の出来事。
それは、今から5年前のこと―――