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私立ウィスタリア学院~新米教師とイケメン教師たち

第10章 事の発端①


「そんなん相手に直接聞けばいいだろ。
『私のことどう思ってますか』って。」

「直接…。」

(だから直接聞くのが恥ずかしいから
聞けなくて悩んでいるのに…)

「…うーん…。」

「そんな聞きにくいなら
俺で練習しろよ。」

「……えぇっ!?」
思わずアヤセは
大きな声で驚いてしまった。

「なんでそんな驚くんだよ。
練習台になってやるって
言ってるだけだろ。」

アヤセは動揺する。

自分のことをどう思ってるか
聞きたい相手に、
「自分のことどう思ってますか」
と聞くなんて、
たとえ練習とは言え、恥ずかしくて
言えない。

「ほら、早く言ってみろよ。」

「…えっ…」

「言わねぇといつまでたっても
このままだぞ。」

アヤセは少し考える。

聞きたい相手に本気でその言葉を
言う予定は今のところない。

だから練習なんて意味ないかもしれない。

でもこの状況が苦しいのも確かだった。

言葉にしたら何か変わるかもしれない。

(練習…だもんね…)

自分に言い聞かせるように
心の中でそう呟くと、
シドを見つめて、意を決して口を開いた。

顔は上気し、心臓はバクバク
言っている…。

「…あ、あの…
シドは…私のことどう思ってるの…?」

少しの沈黙が二人の間に漂う…。

次の瞬間、
シドはアヤセ
の手をぐいっと引っ張り、
ビルとビルの隙間の小さな路地に
アヤセを連れ込んだ。

アヤセは背中をビルの壁に預けられ、
顔の横にはシドの片手がその壁に付く。

(……!!)

シドはじっと真顔で
アヤセを見つめると、
その端正に整った顔を少しだけ傾けて、
アヤセに近づけてきた…。

(……キス…される……)

アヤセはそう感じ取ったものの、
不思議と抵抗という行動は
湧いてこなかった。
むしろ自然にその流れに身を任せ、
目を閉じる…。


二人の唇が重なる…。

深くも浅くもない、
強く強く…優しいキスだった…

まるでシドの人柄を
表しているようだった…。

そのときのアヤセの耳には、
シドの持つ傘にあたる雨の音と、

背中を預けている
ビルの1階に入っているであろう、
クラシックバーから聞こえてくる
『雨音』が、

印象的なハーモニーを成して
聴こえてきていた…。
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