第18章 人助け2/ジン
リビングから聞こえてくる着信音に顔を上げた。思ったよりも読書に没頭してしまっていたらしい。
ベッドに横たわるジンの胸が規則正しく上下していることを確認して、起こさないようにそっと寝室を出た。
未だ鳴り続ける携帯の画面を見ると、表示されていた番号は”非通知”。ジン以外で非通知で掛けてくるような知り合いはいなかったはずだ。首を傾げながら通話ボタンを押した。
『ああさくらさん、良かった繋がった!あっし、ウォッカです!』
聞こえてきた大声に思わず右手に持った携帯を遠ざけて顔をしかめた。
「そんな叫ばなくても聞こえてるよ、どうかした?」
『兄貴と連絡が取れないんです!昨晩FBIに撃たれてそのまま姿消しちまって!電話も出ないし、もしかしてそっち行ってませんか!?』
声だけでも慌てている様子が伝わる。ちらりと寝室の扉に目をやって口を開いた。
「ジンなら私のベッドで寝てますよ。」
『…ぇぇえええ!?さくらさんと兄貴ってそういう仲だったんですか、すいやせん邪魔したみたいで。』
少しの沈黙の後、始めとは比べ物にならない音量が耳に飛び込んできた。想定通りの勘違いをしてくれてつい吹き出してしまった。
「あ、ごめん嘘は言ってないけどそれは誤解。怪我してたから簡単に治療してベッド貸してるだけだよ。多分命に別状ないから安心して。」
『あ、そうっすか…。とにかく兄貴が無事で良かったです。』
安堵した、というよう表現がぴったり合うような息遣いが電話の向こうから聞こえた。
その様子に、一つ頼みごとを思いつく。
「あの、もし明日予定が無かったら家に来てジンのこと見ててくれないかな?私明日も仕事でさ…。」
ジンのことだ、目が覚めたとあればとフラフラと部屋の中を徘徊しかねない。
『お安い御用です!何か持っていくものがあれば買って行きやすよ!』
「ありがとう。今のところは大丈夫かな。明日よろしくね。」