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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第13章 鬼と豆まき《弐》



「それより君の異能のこと。今度、話をさせてって言ったよね」

「あ、うん。時透くんが都合の良い日を言ってくれたら、行くから…」

「いい。来なくて」

「え?」

「…俺から行く。頼んでるのは俺の方だし」


 いつものように感情の起伏は見せない顔で。
 それでも無一郎は、確かにその名を口にした。


「蛍にも蛍の都合があるでしょ。煉獄さんにも、俺から許可を取るようにするから」

「! う、うん」


 いつも無一郎が蛍を呼ぶ時は、鬼の括りでしかなかった。
 初めて自分自身を見れらたような気がして、こくこくと頷く蛍の顔が高揚する。


「へえ、いつの間にそんな仲になったのやら。じゃあ俺も柚霧って呼」

「却下」

「おいなんだその差はよ」


 にやにやと茶化すような笑みを浮かべながら天元が続こうとすれば、即蛍の否定が入る。
 無一郎に向けていた表情とは一変、冷たい顔で一蹴した。


「言ったでしょ、その名前好きじゃないって」

「ならなんで不死川は呼んでんだ。昔のあだ名なら別にいいだろそれくらい」

「よくない。不死川は…稀血を貰った、恩というか…」

「なら俺の血をやれば」

「要らない。却下。あっち行け」

「だからその扱いの差はなんだってんだ、あ?」


 シッシッと動物を払うような仕草で嫌悪する蛍に、ぴきりと天元の額にも青筋が浮く。


「そういう話は余所でやれェ。お館様の屋敷だぞ」


 そんな二人の間に体を割り込ませた実弥が、鬱陶しそうに舌打ちを一つ。二人の会話を断ち切る。

 言葉数も少なくそのまま去ろうとすると、くいと何かに軽く引かれた。
 振り返れば、咄嗟に掴んだのだろう。鬼の手が実弥の袖を握っていた。


「…なんだァ」

「あ、いや…ええと…ありがとう。とは、言っておかないと。と思って」

「礼を言われるようなことはしてねェ」

「…いいの。私が言っておきたかったから」

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