第32章 夜もすがら 契りしことを 忘れずは
触れてもいないのに、花弁を開いた口からとろりと蜜を垂らしている。
物欲しそうに誘う蜜口に、誘われるように杏寿郎は顔を寄せた。
「綺麗だ…君の体は余すところなく全て」
「っ見過ぎ、だよ…」
「甘い香りをこうも感じれば不可抗力というものだ」
「そんなこ──ぁうッ」
恥じらい逃げる蛍の思考は十二分に知り尽くしている。
それでも尚、健気に言うことを聞いて体を明け渡す様がいじらしくて堪らないのだ。
我慢ならずに溢れる蜜口を唇で覆い、じゅっと吸い上げる。
胸の時とはまた違う反応に気をよくして、更に舌を蜜壺の中へと捻じ込んだ。
「ぁっあッ杏…ッ」
じゅるじゅると甘くも感じる愛液を含んでは、お返しとばかりに唾液を送る。
逃げ腰のように浮く蛍の腰を桃尻を掴んで阻止すると、形を探るように蜜壺の中を舌で弄った。
「んンッそれ…ぇッ」
頸を横に振りかぶる蛍のそれは、善いところであるサインだ。
形すら覚えてしまった蜜壺の上側を尖らせた舌先で強く擦り上げれば、逃げ切れない腰が快楽に踊る。
「はッぁんッ」
仰け反る蛍の声が蜜のように甘くなる。
伸びた手がくしゃりと杏寿郎の頭を掴む。
反射的に閉じようとする脚を両手で押さえたまま、喉を潤すように杏寿郎は蜜の味をたっぷりと味わい続けた。
「も…っきちゃ、うッ」
予兆に震える肌を掌で感じ取る。
舌の愛撫は止めぬまま、恥丘に掌を這わす。
目の前で小さく主張する敏感な肉芽。
その皮をそっと剥くようにして指先で外気に晒せば、ふるりと蛍の腰が緊張で震えた。
この先の快感を知っているからだ。
杏寿郎に教え込まれた体は従順に記憶した快感を思い出し、期待に震えている。
思わず口角が上がる。
硬く尖らせた舌先で蜜壺を抉り上げながら、剥いた陰茎を優しく指先で押し潰した。
「ふあンッ!」
快楽の階段を一歩一歩上がっていた体が真上へと到達するように。待ち侘びた刺激に腰が跳ねる。
杏寿郎の口に押し付けるように溢れた蜜口を曝け出して、蛍は高みへと昇った。