第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
にこやかに主人が述べるのを、政宗はぼんやり眺めていた。脳裏には、馬上で秀吉の腕に抱かれる桜の姿が焼き付いて離れない。
何故隣のくじを引かなかったのか…。
まあ、馬上では大した進展も出来ず、降りたあとで光秀に労われていたようだったが…。
広間へ男が入ってきた。主人の横へ座り畏まる様子からみて、息子か。
「こちらは、我が子の吉次(よしつぐ)でございます。私と共に皆様のお世話をさせていただきますので」
「吉次でございます」
予想通りの紹介にその息子とやらを見れば、どこかをじっと見ている。
なんだ…?
「大変失礼を承知で申し上げますが…そちらの姫様は?」
「桜です。お城でお世話になっています」
吉次に笑いかける桜。
だめだ、そんな顔で笑いかけたら…
「桜様、どうぞよろしくお願いします」
見る間に桜と距離を詰めたかと思うと、戸惑う桜の手をとる。
何してんだ、こいつは…っ!
「は、はい」
「何をしている、貴様」
「おい、離せ」
桜の傍にいた信長様と俺が、すかさずギロリと睨んで手を離させた。が、こいつは気分を害した様子もなく、にこやかに笑ったまま。
「申し訳ありません、桜様が、あまりにも可憐で麗しいものですから」
…こいつ…斬りてえ。