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【イケメン戦国】紫陽花物語

第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*



そう言って、秀吉さんの顔が耳元まで近づいてくる。くんくん、と匂いをかがれて、秀吉さんの吐息が耳にかかる。


耳、弱いみたい。ぴくんと反応しちゃって、恥ずかしくて顔を反らした。きっと今。すごく赤くなっちゃってる。


「どうした?」


秀吉さんの声が、さっきまでよりも数段甘い気がする。耳朶をくすぐる低音に、身体の芯が熱を持つ。


「べ、別に何でもない…!」


一生懸命平静を装ってみるけど、声が小さくなっちゃってる。どうせ私をからかって遊んでるんだ、その手には乗らない。
深呼吸、深呼吸…!


「もうすぐ、見えてきますよ」


必死に深い呼吸を繰り返してたら、前の方を進んでいた三成君が振り返った。
少し身体をずらして前を見ると、まだ遠いものの、白い湯気が立ち上ぼる建物があるのが分かる。

それまでのドキドキは急に何処かへ行ってしまって、 私は旅行の実感が唐突に湧いてきた。


「わあ、見えてきたね」

「…そうだな」


秀吉さんが返事してくれるけど、なんだか冴えない。

宿に近づくと、お迎えにたくさんの人が出てきて、馬を引いて誘導してくれた。門で馬を降りて預けると、玄関まで皆で進む。

隣を歩いてた秀吉さんの肩に、光秀さんがぽんと手を置いているのが見えた。


「ようこそ、お出でくださいました。信長様、皆様」

「世話になる」

「こちらへどうぞ」


案内された広間にとりあえず座る。


「皆様がいらっしゃる間は貸切りですので、何処でもお使いくださいませ。お部屋の準備も湯殿の用意も既にすんでおります故、ご存分におくつろぎください…」
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