第8章 空白の時間
「そういやお前、首輪は外してもらったのか」
『うん、今日は地上に降りなきゃいけない用事があって…ほら、拠点が空の上でしょう?だから、構成員さんたちの移動の為に……中也さん、何が言いたいかは大体想像つくけど、ダメだからね』
今扉で移動が出来るんなら俺を連れていけというような顔をした中也さんに、ダメだと先に押し切った。
「いや、だがそうすりゃお前をかっさらっていって…」
『それじゃあ私が指輪をつけてった意味が無いでしょ…ていうかダメだよ、空の上で拠点を破壊して私の事だけかっさらってっちゃったら、組合の人達皆潰れちゃうじゃない。そんなのしたら中也さん嫌いになるよ』
「………俺はそんくらいしてやらねえと気がすまねえし、殺してやってもいいくれぇなんだが」
『だーめ』
意見を曲げない私に遂に中也さんは何も言えなくなって、がっくりと項垂れた。
『…いいじゃない、どうせすぐに助けに来てくれるんでしょ?中也さんが助けるって言ったら絶対助けてくれるの、私分かってるんだから』
「!ま、まあそうだけどな!?そりゃそうだ、探偵社との協力関係が成立すればすぐにでも行ってやる!!」
中也さんの言葉に結局やっぱり嬉しくなって、再び抱きつくように擦り寄った。
…分かってても、やっぱりここから離れたくないなぁ……こんなに大好きなところ、他にないのに。
『中也さん…』
「なんだ?」
『私の事、嫌いになってない?…どうでもよくなっちゃって、ない?』
もう外も暗くなりかけてる。
離れなくちゃならないと思えば思うほど、本音が漏れる。
「お前よ…嫌いでどうでもいいような奴に、俺がキスなんかさせると思うか?これでもまだまだ足りねぇ位で、お前にキスマークなんざつけやがった奴やあの触手の野郎をとっととぶっ飛ばしてぇんだよ俺は」
言ってから、額にキスが落とされる。
『……ッ、も、あれ、やだっ…中也さん以外と、やだッ…』
「分かってる、あの狙撃手につけられたもんじゃねえだろそれは。俺が全部落とし前つけてやるよ」
額から髪、頬、反対の頬、首、胸元と、次々にキスをされていく。
先ほどされた手の甲も、腕も、挙句は脚や足の指先まで。
『ッ、キス、しすぎっ…!!』
「お前さっき俺にもっとやってただろが。…もう一箇所してえんだが?」
中也さんの声に目を瞑ると、また、唇にキスをされた。
