第8章 空白の時間
「………よかった、お前は生きててくれて」
『生きてるよ。死にたくもなったけど…死んじゃって中也さんまで死んじゃったらダメだったから』
「俺が死ぬかよ…ああでも、お前の事ならどうなっちまうか分かんねえな………ッ、これ、どうした」
少し顔を離したかと思うと、中也さんが少し胸元の布を捲った。
そこにはまだ立原に言われた紅い痕が残っており、そこに中也さんの指が触れて肩がピクリと跳ねる。
『そ、っれは…さっき、気付いたらついてて……』
さっき?と聞く中也さんに、やはり話すのが躊躇われて、後で立原に聞いてと話すのを拒んだ。
…言えないよ、自分の口からなんて。
「………まあ大体予想はついた…ちょっと我慢しとけ」
『えっ、何するつも…ッひ、ぁっ…ぁぅ……っ』
紅くなっていたそこに指で唾液を付けたかと思えば、すぐにそこに口を付けられた。
そしてそこをチュ、と吸って、チク、と痛みが走る。
それに驚いて中也さんに回す腕にいっぱい力が入って、身体が震えた。
『は、ぁっ……な、にして…ッ?』
「上書き…他の野郎に付けられてたって知るか、どうなったってお前は俺のもんなんだ。つかお前、キスマークも知らなかったのか?そんだけ生きてきてるくせして本当にこの辺疎いよな」
『へ、っ!?お、俺のもんとか…』
中也さんの言葉に頭がグルグルしてきた。
そんな事…ていうかこのキスマークっていうの……
「俺のもんだって印…流石のお前の身体でも、特に害もねぇもんだし治りにくいだろ」
『あ、の…前、お腹に付けてました……っ?』
「お前あれ疑問に思わなかったのかよ」
『じゃ、じゃああんなところにこんな事して!!?てかいつの間に付けてたんですかあんなの!!』
思わず取り乱して、つい数日前にふと見るとお腹の端の方についていたキスマークなる紅い印を思い出す。
「あー、あれか?……お前が俺に散々可愛いところ見せて気絶して、いい寝顔見せてくれてる内に」
『寝がっ…〜〜〜!!!』
言う事が一々恥ずかしくて、ポカポカと背中を叩く。
「おーおー、いいマッサージだ、全っ然効かねえがな。つかお前実はくっついときてぇだけだろそれ」
『何か文句あるの!?くっつい…て……ッ!!?』
「プッ、マジで面白ぇ………顔上げろ」
むくれつつも逆らえずに上を向けば、久しぶりに愛しい人からキスされた。
