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第26章 帰郷


魂を浄化するためには、確かに虚を魂葬するために倒さなければならない。
しかし、この世界において虚に干渉する力といえば、どれも霊子や霊圧を扱うもの。

もしも、霊子によるものでない力に滅ぼされてしまえば…壊れた魂は戻らない。

『…じゃあお願い。できれば人目のつかないところに連れてって?……好きにしてくれてもいいから。あんまり人目の多いところは苦手なの』

だから、中也も手を出せない…手を出さないよう、誰かが伝えたのだろう。
彼の力は確かに強い。

素手でも恐るべき力…だが、虚の体はそれだけでは崩せない。

そして、恐らく霊子の存在しないあの世界において出現した異能力という力では…魂を破壊してしまう。

目で合図を送れば、彼はすぐにその場からいなくなる。
逃げろと言ったわけでも、見捨てろと言ったわけでもない。

彼もよく理解しているからだ、私は虚になんかやられない。

そして、街に被害を及ぼすことが大嫌いだということも、人目のあるところで無闇に戦闘をすることを避けたい性分であることも。

「ふん、もう一人の人間は逃げてしまったようだな?可哀想に…人間などたかが知れている。……おや、強がってる割には震えているぞ?死神」

『…何ともないわよ。早くどこか連れてって……あんまり人前で醜い姿、晒したくないの。それくらい叶えてくれてもいいんじゃない?』

「……まあ、慈悲くらいはやろう。偉く肝の座った奴だ…けど、やけに大人しすぎて面白くない…どれ、少し遊んでやりながら移動しよう」

なんて聞こえた途端に、虚から生えていた触手が口の中に入ってくる。
いきなりの質量に吐き出しそうになるも、それが出ていってくれそうな気配もなく、ただ喉奥へとそれが入り込んでくるだけだった。

『…ッ、ン……っ…』

「おやおや、苦しかったか?すまないなぁ…それにしても可愛らしい顔をする。…ほら、たっぷり味わえ」

そのまま、直接体の中に、熱い液が流し込まれる。
何かの毒だ、瘴気もすごい。

まあ私のからだならば命に別状はないはずだが。

『ッぅ…、ッン゛、ん…、っ』

苦しさに悶えさせられるも、下手に抜け出したりなんかして警戒されると厄介でそれも得策じゃあない。

しかし、こんなに苦しいと流石に私も意識が薄れて…

『…ッ、ン……、っ』

あ、知ってるこの感覚。
これ、私の苦手なやつだ。
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